岩手西北医師会

岩手西北医師会は、八幡平市・葛巻町・岩手町・雫石町・滝沢市で、
開業、勤務、居住する医師が加盟する団体です。
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岩手町 岩手町

キャベツ畑(岩手町)

岩手町

岩手町担当理事のあいさつ

 岩手町には現在9つの診療所があります。岩手町の医師集団には、ずっと以前から町内の様々な課題に積極的に取り組んできた歴史があります。
 最近では、特に令和3年以降、新型コロナウィルス対策が重要な課題となりました。令和3年~令和4年6月まで、町と医療機関にて8回調整会議を行いワクチン接種体制について議論しました。医療機関での個別接種を行うこととなり、町内の多くの医療機関の奮闘により、接種は順調にすすみました。令和4年6月13日現在での3回目ワクチン接種率は、65才以上高齢者で87.1%に達しています。
 ここ数年では、認知症対策や岩手町糖尿病性腎症重症化予防プログラムなど、町と医療機関との共同の取り組みがありました。また、町民の健康志向の意識が比較的高いため、コロナ禍においても健康診断受診率は比較的高く、健康診断結果の説明や二次精査は、以前と同様に、町内診療所の重要な仕事となっています。
 しかし、全体の活動としては、新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあって、岩手町の中で目立った取り組みはなかなかできない状況がありました。
 岩手町では以前、レントゲンカンファレンスという症例検討会を月に一回沼宮内地域診療センターにて開催していました。私が岩手町に来たばかりの2014年ころには、町内のほとんどの医療機関の先生方が一同に会し、情報交換や学習の場ともなっておりました。その当時参加しておられた坂井博毅先生からも、医師患者関係に関連する含蓄のあるお話しをお聞きできたことが印象に残っております。
 残念ながら、ここ数年さまざまな事情や新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、町内のカンファレンスは中止のままとなっています。
 岩手町で長年地域の診療を支えてこられている佐々木医院の佐々木久夫先生によると、レントゲンカンファレンスが始まったのは昭和55年頃のことでした。当時の県立沼宮内病院長の髙橋司先生や和田医院の和田栄吉先生が中心となり、町内の医療機関に呼びかけられたといいます。症例検討を中心に月に一回やるというスタイルでした。このような集まりを続けていく中で、がん検診などの受診率が岩手県で最下位グループにいた岩手町をなんとかしよう、町民の健康教育に取り組んでいこうという機運が生まれたとのことでした。全医師会員が地域をあるきまわり、高血圧や胃がんについての住民教育を行うなどの地道な活動が始まりました。岩瀬張という葛巻町との境にある山深い集落を皮切りに、全部落を各自が担当したということですので驚きです。昭和62年には「病気が進行してから見つかっても検診の意味が無い」という医師の発言から、岩手町検診推進委員会が設立されました。地域の保健推進員が養成され、町内くまなく、検診をすすめていくようなシステムにつながりました。その後岩手町が検診受診率で岩手県トップとなるような状況に結びついていったというのです。
 ご近所の医療機関の関係者が定期的に集まり、意見交換をするというのは本当に大事なことなのだと学びました。このようなカンファレンス意見交換会を再開すべきだという声もあり、再開に向けて取り組んでいければと思っています。
 その他にも、岩手町にはいろいろな課題があります。例えば、1978年11月の開業以降、長きに渡って岩手町の入院医療を担ってこられた、佐渡医院(院長佐渡豊先生)の入院ベッドが令和3年12月をもって廃止となりました。県立沼宮内病院の診療所化などのベッド廃止の流れの中で、地域のベッドを守ってこられたことで、地域に計り知れない貢献をしてこられたことに心より敬意を表したいと思いますし、実際私も何人もの方の入院をお願いしてきましたので、非常に残念で寂しい気持ちがあります。現在、岩手町で入院できる医療機関は無くなりました。夜間や休日に頼るところが少ないという住民の不安感は一定あるようです。休日当番医制度の運用の仕方、在宅診療へのニーズの応え方などが今後の課題となってきそうだと思います。
 また、岩手町の特定健診からみる生活習慣病、生活習慣の状況の分析によると、メタボリックシンドローム予備軍は県内2位、肥満者県内4位、高血圧県内2位(それぞれ割合)と不名誉な位置を占め、喫煙者運動習慣のなさ、多量の飲酒なども県内平均を大きく上回っているようです。岩手町の健康福祉課も、さまざまな施策を打ち出して取り組んでいるようですので、協力して取り組んでいくことが重要と考えています。
 今後も健康づくり困難な課題など、町内の多様な課題に積極的に取り組む、町の医師集団でありたいと考えています。